明治は続くよいつまでも

*2010年、上海万博が開かれていたときに記述した文章です。

   (2010年5月2日記述)

 

 上海万博の日本館が日の丸掲揚を見送り、それに対しての批判・非難が2チャンネル周辺でおこっているみたいである。

まあ、戦後、憲法体制・政治体制が根本的に変わったにもかかわらず、戦時中使用していた国旗・国歌を敗戦後も使用しているのだから、こういった問題は、憲法・政治体制が「明治的なもの」に戻るか、それとも戦後憲法の理念を反映した新国旗・新国歌が制定されるかしない限りは、これからもおこり続けるだろうね。(ただし、どっちの場合も国論が真っ二つに割れ、今回以上の論争・対立が巻き起こるだろうけれども。)

 そもそも、近現代の日本は「軍国主義化以前の大日本帝国体制」「軍国主義体制」「戦後民主主義体制」と政治体制が3回かわったけど、一貫して「日の丸・君が代」を国旗・国歌にし続けているんだよね。

 軍国主義時代の日本が、ナチスドイツみたいに新国旗を制定していたら、敗戦後日の丸を国旗に復活させたとしても「日の丸は軍国主義を象徴する」などと叩かれることはなかったんだよね。

 ドイツは、ワイマール時代に現在の国旗が制定され、ナチス時代に鉤十字をかたどった新国旗が制定され、第二次大戦後再びワイマール時代の国旗に戻ったらしい。それと比較すると日本は、ドイツ第二帝国時代の国旗・国歌を政治体制がかわっても延々使い続けているようなもんなんだよね。

 ドイツは、それが良いことか悪いことかは別にして、民主主義革命がおこって民主主義国家を象徴する国旗が制定されたけど、日本はまだドイツ第二帝国が続いているようなもんなんだよね。

 戦後の憲法・政治体制は、アメリカに占領されたから作られたのであって、もし日本がアメリカに占領されなかったら、日本の憲法・政治体制は「明治憲法と戦後憲法の中間的なもの」にしかならなかっただろうね。大多数の日本人の憲法・政治意識は、今でもまだ「明治憲法と戦後憲法の中間的なもの」でしかないだろうね。

 

○日の丸・君が代をめぐって

(ここから文体かわります)

 日の丸・君が代を日本の国旗・国歌にすることに反対する人は2種類いる。日の丸・君が代を「大日本帝国」の理念を象徴するものとみなし、「戦後民主主義国家」の理念を象徴する新国旗・新国家を制定すべきと考える人たち。それと、軍国主義時代使用していた国旗・国歌は否定すべきと考える平和主義者たち(上記の2派は、かなり重複している可能性もある。また、国旗・国歌不要論を唱える人も加えると(反対派は)3種類になるだろう)。

 反対派の弱点は、日の丸・君が代にかわる(多くの国民にとって)魅力的な新国旗・新国歌案を提示できなかったことにあるだろう(国旗・国歌不要論者は代案など提示するはずないけれども)。

 このことは、戦後の左派・左翼が政府や与党を批判するだけで、自ら権力を手にして自分たちの理念に基づいた政治・政策を実現できなかった欠点をそのままあらわしている。多くの国民が日の丸・君が代よりも良いと感じる(考える)国旗・国歌案が提示されない限り、新国旗・新国歌が制定されることはないだろう。だから、反対派が「日の丸・君が代を日本の国旗・国歌にすることに反対する」だけの運動を続けている限り、日の丸・君が代にかわる新国旗・新国歌が制定されることはないだろう。

 また、右派・保守派の中には、「日の丸・君が代を日本の国旗・国歌にすることに反対する人たち」を反日的・反愛国的とみなしたり、「そんなに日本が嫌いなら日本から出ていけ」という支離滅裂な主張をする人も少なからずいるようである。こういった主張をする人たちは論理的な思考ができない人なので相手にする必要はないが、「天皇・日の丸・君が代」こそが日本そのもので、これらが1つでも廃止されたら日本はおしまいだ、と考えている人も少なからずいそうである。

 冒頭の上海万博での日の丸掲揚見送りに関しては、新国旗を制定すればこうした問題はおきないのだから、掲揚見送りを批判する人たちこそ新国旗制定運動に尽力すればいいんじゃないの、というのが感想である(戦時中使用していた国旗・国歌を使い続ける限り、こうした問題は繰り返されるのだから)。

 あるいは、国内用の国旗と国外用の国旗を2つ制定し、戦場となった地域では国外用の国旗を使用するという方針をとれば、こうした問題はおきないだろう(そのことが思想的・理論的に問題ないのかという疑問はあるし、問題なかったとしてもそんな案に賛成する人はほとんどいないだろうけれども)。

 

○戦後憲法と日の丸・君が代

 日の丸・君が代は、明治憲法の理念を象徴するもので戦後憲法と矛盾しているという考え方があるだろう(日の丸は、明治維新の結果成立した近代的な国民国家を象徴する国旗であって、戦後憲法と矛盾していないという考え方もあるかもしれないけれども)。

 憲法明治憲法的なものにかえれば、国旗・国歌と憲法との矛盾は解消できるだろう。だが、そのような憲法改正に賛成する人は少数派だろう。

一方、戦後憲法の理念に基づいた国旗・国歌が制定されればやはり矛盾は解消されるが、そのような国旗・国歌が制定される気運はまだない(将来はわからないけれども)。

国民や政治家たちの政治意識が「明治憲法と戦後憲法の中間的なもの」であり続ける限り、日の丸・君が代をめぐる左右の対立はこれからも繰り返されるだろう。