あなたは憲法9条改正に賛成ですか

 「あなたは憲法9条改正に賛成ですか?」といった類の言説をマスメディアでよくみかけた。

だが、よく考えてみるとこういった問いかけはおかしなものだろう。

日本の軍事政策(防衛・安全保障政策)についてなんらかの見解をもっていて、その人なりの改正案をもっている人は「賛成です。」と答えるだろう。

一方、どのような改正案が提示されてもそれを否定し、現行の条文を守るべきだと考えている人は「反対です。」と答えるだろう。

だが、そうでない多くの人は、具体的な改正案も提示されていないのに、漠然と憲法9条改正に賛成か反対かと問われても、答えようがないのが実情だろう。

改正案の方が現行の条文よりもよいと判断すれば改正に賛成、改正案よりも現行の条文の方がよいと判断すれば改正に反対というのが一般的な対応であろう。

 なぜ、こういったおかしなことがおきているかといえば、前述の問いかけが憲法9条反戦平和の思想に賛成か反対かといった思想上、イデオロギー上の問いかけになってしまっているからだろう。

改憲派憲法9条改正派)」であるか「護憲派(9条改正反対派)」であるかを表明することが一種の信仰告白、あるいは所属する党派の表明になってしまっているといえる。

日本の軍事政策の基本理念はどうあるべきかといった根本的な問題を曖昧にしたまま、「思想言論空間」において護憲か改憲かといった(ある意味不毛ともいえる)論争が繰り返されてきた状況を反映した問いかけといえるだろう。