「太平洋戦争」と「戦後民主主義」をめぐる言説のねじれ

 ステレオタイプの右派は「太平洋戦争」を肯定・擁護し、「戦後民主主義」を否定・批判する。

一方、ステレオタイプの左派は「太平洋戦争」を否定・批判し、「戦後民主主義」を肯定・擁護する。

 

 戦後の憲法、政治体制は占領軍の力があったからこそ実現できたと言えるだろう。

もし太平洋戦争を行わず、アメリカに占領されることがなければ、基本的には明治憲法大日本帝国の政治体制が続いていただろう。

 時代の経過に伴い多少は憲法や政治制度に改良が加えられたかもしれないが、革命でもおきない限り現在のような憲法・政治制度を日本人自身の力でつくりだすことはできなかっただろう。

 

 ステレオタイプの右派・保守的な価値観をもっている人たちは、「戦後民主主義」を否定したいのであれば、その前に「太平洋戦争」を否定すべきだろう。

連合国相手に勝算の少ない戦争を行わなければ、アメリカに占領されることもなく、占領軍の力を背景にして現在の憲法や政治制度が成立することもなかったのだから。

 

 ステレオタイプの左派は「太平洋戦争」を否定しているが、もし「太平洋戦争」を行わずアメリカに占領されなければ、自分たちが望むような憲法や政治制度を自分たちの力だけでつくることはできなかっただろう。

 右派と左派の政治的力関係を比べれば、圧倒的に右派の方が強い。

国民の政治意識も、左派・リベラル的な価値観をもっている人たちよりは、右派・保守的な価値観をもっている人の方が多数派だろう。

戦後の思想・言論の世界では左派的な思想・価値観が主流となったが、それは日本が戦争に負けたからかもしれない。

もし敗戦という経験をしなかったら、学界もマスメディアも右派・保守派が主流・多数派であり、左派・リベラル派は少数派であったかもしれない。

治安維持法が廃止されずそのまま存続していたら、民主主義的な政治制度を望む自由主義者たちが弾圧される時代が続いていたかもしれない。