年金制度は40数年後を目途に生活保護制度を補充する制度に移行すべき

 年金制度については、年金財源(年金保険料)をどのように徴収するか、年金の支給額をどうすべきかの2点を考える必要がある。

現在は、年金保険料を税金とは別に徴収し、保険料を一定年数払った人のみが、払った期間と払った保険料の額に応じて年金を受け取る制度になっている。

 だが、こうした年金制度は経済成長時代の価値観やシステムに基づいて設計されており、少子高齢化、労働環境が流動化した現在においては制度を継続するのが困難になったと思われる。

公務員や大手企業の社員など高額の退職金を貰った人たちが高額の年金を受け取っている。一方、国民年金保険料を納める経済的余裕がなかったため年金未受給となった高齢者は、(申請が認められた場合は)生活保護を受け取ることになる。

国民年金保険料の未納者はかなりの数にのぼっているそうだから、今後、年金未受給者が増えればその分生活保護の受給者は増える一方だろうし、生活保護の申請が認められなければ高齢者の貧困者が増加するだけだろう。

 公務員などの安定した職業についている人が、退職後、高額の退職金と年金を受け取る。その一方、生活保護の受給者数と、生活保護を貰えない貧困者数が増加する。

数年前にマスコミで話題となった"格差社会"という言葉は、現在の社会保障制度を維持し続ける限り、何十年か後には笑えないレベルのものに悪化しているだろう。

 

 こうした状態を改善するために、現在のように年金保険料を一定期間以上支払った人のみが、支払った保険料と期間に応じて年金を受け取るという複雑な制度は廃止する。

そして、現在年金保険料として支払っている分を税金として徴収し、支給する年金は生活保護費と同程度の額とする。(それにより年金受給年齢者の生活保護費支給は打ち切りとする。生活保護費を年金という形で支給するので。ただし、病気などで高額の医療費がかかる高齢者に対しては、医療費の免除などの制度は継続する。)

年金と年金受給年齢者の生活保護費支給を一体化し、年金受給年齢になったら誰でも生活保護費と同程度の年金を受け取れる平等でシンプルな制度に移行する。

 

  *補注

 生活保護費と同額の金額を年金として支給するのが財政的に困難な場合は、数年前、民主党が提案していた最低保障年金と同額の金額を受け取れる形にするのが望ましいと思える。その場合、生活保護受給者は、生活保護費と最低保障年金額との差額を受給できる形にする。

 また、受け取る年金額が最低保障年金と同額では少なくて不満だという高額所得者は、年金基金などの制度に任意に加入し、年金保険料を支払った額と期間に応じて年金基金を上乗せとして受け取れる形にするのがいいだろう。

 

 

 90年代以降の非正規雇用者の増加にともない、将来、年金未受給のために生活保護を受け取ることになる低所得者層や、生活保護の申請を断られるだろう貧困層はますます増加していくだろう。

にもかかわらず現在の年金制度は、退職後、高額の退職金を受け取ることのできるような比較的裕福な層が手厚い保護を受けるという、社会保障社会福祉の理念とは相反したものになっている。

また、現在の年金制度を根本的にあらためなければ、増加する年金額と生活保護費によって財政が破綻するかもしれない。

さらにいえば、国民年金受給者の中には生活保護費よりも低い年金しか貰えない人がかなりいるだろうから、国民年金保険料をまじめに納めた人よりも、国民年金保険料を払わずに生活保護費を受給する人の方が高い金額を受け取るという不公平・不公正なことが生じるだろう。

現在の年金制度はシステムが複雑なだけでなく、様々な点で不公平・不公正さのある欠陥だらけの制度だから、一刻もはやくシンプルで公平・公正な制度に改変する必要がある。

 

 ただし、年金の支給に関しては、すぐに支給方法を変更すると今まで高額の年金保険料を納めた人たちからの不満が当然おこる。

だから年金保険料(私のこの案では税金に変更されるが)の徴収方法は、新制度の導入とともにすぐに変更する。

一方、年金の支払い方法の変更は40数年後(新制度導入時20歳だった人が年金受給年齢になった時)に完全実施するべきだろう。

新制度導入後、20年位は現在の支給方法を継続し、残りの20数年間で現在の支給方法から新しい支給方法に徐々に変更していくのが望ましいと思える。

 

 なお、この制度に転換した場合、現在企業・会社が負担している厚生年金保険料の負担分をどうすべきか、という問題が残る。

これに対しては、

・年金財源は消費税・所得税などでまかない、企業・会社の負担分はなくす。

・現在、企業・会社が負担しているのと同程度の税金を徴収する。

・現在、企業・会社が負担しているよりは少ない額の税金を徴収する。

という3つの考え方がある。(私個人は、どの案が一番いいとは言えない。)

 

 ただし、以上述べたことは理念的なことにすぎないので、この案を実現させる場合、財源をどうするのか(消費税や所得税をどの位上げる必要があるのか)などの実務的な面での検討が必要となる。